一流ブランドであるにも関わらず、余りにも一般的になってしまったために、いつの間にかカジュアルシーンでしか使えなくなってしまったブランドは少なくありません。そのなかでグッチが、これだけの人気を勝ち得ていながらも、今なおどんなシーンでも臆することなく使えるというのは驚くべきことです。
その秘密は、革新と伝統との計算し尽くされた絶妙なバランスにあります。ビビッドな配色や、創業者グッチオ・グッチの頭文字を表す「ダブルG」の存在感が、軽快さやオリジナリティをアピールする一方で、落ち着きのある色でこしらえた厚めのキャンバス素材は、老若男女問わず持つ者に落ち着きやエレガンスさを与えてくれます。かのオードリー・ヘップバーンがグッチを愛用していたことからも、華やかさと可愛さの両面を併せ持つグッチの特色がよく分かるのではないでしょうか。
今ではすっかりお馴染みとなった、GGキャンバスファブリックと呼ばれるグッチのキャンバス素材ですが、デザイナーの名をモノグラムにしたのはグッチが世界で初めてであり、常にモードの最先端であろうとしたグッチの思想がキャンバス素材を一つとっても伺えます。
ただし、グッチのキャンバス素材はとても繊細なため、そのままでは残念ながら日常的に使い続けることは難しいのが現状です。バッグから頻繁に取り出すために、せっかくオシャレなグッチの財布が、汚れてボロボロになってしまっている方をよくお見かけします。せっかく一生もので使えるグッチなのですから、シーンに応じた使い分けが望まれます。
普段使いを希望している方には、キャンバス素材にビニールコーティングを施した「GGプラス」や、光沢感を強調した「GGクリスタル」がお薦めです。どちらもビニールを被せることにより防水性や耐久性が格段にアップしているので、日常での使用でも十分耐えうる造りとなっています。両シリーズのデザインはカジュアル向けのものが多く、グッチの数あるコレクションの中でも、特に若い方へ人気のラインナップとなっています。
「GGプラス」や「GGクリスタル」が、ポップさや軽快さを表現しているとすれば、堅牢さや高級感を醸し出してくれるのが、「グッチシマ」と「グッチバンブー」です。
キャンバス素材を使ったモデルが多い中、「グッチシマ」は最高級レザーを惜しみなく使用しており、時代の先を行きつつもトレンドに左右されない、グッチの代表格と言えるのではないでしょうか。特にグッチはレザーの色によって、印象が全くといっていいほど変わってきます。気品のあるダークブラウンやブラックはフォーマルな場にうってつけですし、ホワイトやピンクは可愛さや軽さといったフェミニンな印象を与えてくれます。さまざまなシーンに応じて色で使い分けることができるため、「グッチシマ」はわざわざ複数所有する方が多いのも特徴です。
「グッチバンブー」は柄の部分が竹で出来ており、グッチの特徴あるラインナップの中でも際立って独特なデザインとなっています。耐久性の向上も兼ねてダイヤモンド型のステッチと麻が用いられている「ディアマンテ」同様に、第二次世界大戦に巻き込まれて素材の調達が困難であるために、仕方なく竹が用いられたという過去を持っています。しかし、その奇抜でモダンなデザインは登場するや否やファッションシーンを席巻し、瞬く間にグッチの顔となりました。日本でも80年代後半から90年代にかけて、爆発的なヒットを起こしたことで知られています。一時期はブームの反動もありましたが、グッチショップが日本にオープンしてから50周年を迎えた2014年には、オリエンタルなデザインのグッチバンブーが日本限定で発売され好評を博すなど、ふたたび「グッチバンブー」の本当の良さを知る人々を中心に、現在人気が再上昇しています。